実録!マジボイス実現委員会 ライターのヨッピーさんが改善会議に潜入!

「こんなに空気の悪い会議は初めて」「でも全部公開しちゃいました(笑)」ツナ缶を巡る大人たちの争い

こんにちは。ホームセンター大好きライターのヨッピーです!

本日はみんな大好き驚安の殿堂ことドン・キホーテ属するPPIHグループ(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)のマジボイス実現委員会からリアルな現場レポートをお送りします!

「マジボイス実現委員会」とは「マジボイス」に寄せられたお客様からのご意見に対して、マジの本気で対応し、商品改善を行っていく組織だそうです。

商品改善の一例!

マジボイス」に「ここをもっとこうしてくれ~!」みたいな改善案を送ると、「マジボイス実現委員会」の議題にあがり、マジで本当に改善してくれたりするそうです。

そこで本日はこの、「マジボイス実現委員会」でどういった事が話し合われ、どういった流れで商品が変わっていくのかをレポートしたいと思います!

先に言っておくと、この日の会議はめちゃくちゃ空気が悪くなったのですが、それはそれで面白いので書くことにしました。

潜入した会議での対象商品

  • ド情熱
    ラベルレスのライトツナフレーク70g×10缶パック
    商品コード:4549777400560
ヨッピー
この商品の
実現会議潜入してきました!
ラベルレスのライトツナフレーク70g×10缶パック
個包装には何も書いてない!

なんでも、ラベルレスにする事で製造コストの限界に挑戦した商品だそうです。

たしかにツナ缶って、価格競争になりやすい商品なんですよね。
チラシに載せる商品として選ばれやすく、その分だけ価格競争も起こりやすいという。
他には夏場の安い扇風機やティッシュペーパーなんかも「安売りするぞ~!」っていう圧力が生まれやすい商品。
ツナ缶の担当MD※:野木さん
※MD……マーチャンダイザー。商品の開発・企画・販売担当者。小売店における花形とも言える職種だが、問題のある商品や売れない商品を作ってしまうと「なんであんなものを作ったんだ」と全店舗から怒られまくるのでめちゃくちゃ責任が重い大変なお仕事。
野木さん
担当MD
価格競争が激しい上、年間通じてたくさんのお客様にお求め頂いている商品ですので、原材料の確保も大変ですし、更には為替の影響も受けますので扱うのがとにかく難しい商品です。本当に苦労しました……!
マジボイス実現委員会の様子
岩崎さん
司会進行
それでは、このラベルレスツナフレーク10缶パックについて集まった、お客様からの評価を見て行きたいと思います。
「マジボイス」のアンケートから抜粋
岩崎さん
司会進行
まず、購入会員数が6万5,000人を超えていて、めちゃくちゃ売れている商品ですね。
「マジボイス」のアンケートから抜粋
岩崎さん
司会進行
更に、「いいよ!」率が90%近いのでお客様の満足度も高く、大変喜んで頂いている商品であることも言えると思います。
お客様
家族がツナ好きでよく食べるので3缶パックだと少なかった。10缶もあるし、コスパも良いのでリピ買いしてます。(50代女性)
お客様
マヨネーズと一緒にしておにぎりにするとすごく美味しい。ラベルレスで環境にも良いし、コスパも良くて言うことがない。(40代女性)
お客様
1缶あたりの金額が安くてとにかくお得。(20代男性)
岩崎さん
司会進行
……というものがあります。
以上のように「コスパが良い」という部分が評価されているのは狙い通りであると言えるのですが、一方でネガティブな意見もあります。
お客様
油が多いのが気になる。リピ無し。(50代女性)
お客様
安いけど油だらけ。本当にお得なのか?(40代女性)
岩崎さん
司会進行
など。まとめると「油が多い」という意見が多い印象なのですが、いま使っている油の量を減らす事は出来るのでしょうか?
野木さん
担当MD
ちょっと待ってください。お客様から「油が多い」という意見が来て、「じゃあ油を減らしましょう」ってそれで良いんですか?

この商品は「いいよ!」率が90%でお客様にご満足頂いている商品じゃないですか。しかもお客様から評価頂いているのは「コスパ」の部分ですよね?

「油を減らして中身を増やしましょう」って、そんな事をしたら当然コストがあがって、販売価格にも影響が出るでしょう。値段が高くなり、「コスパが良い」と評価してくれたお客様が離れて売上が下がったらマジボイス実現委員会が責任をとってくれるんですか?
岩崎さん
司会進行
でも、お客様から来たご意見として実際にあるものなので、改善出来るところを改善していく、というのは我々の使命じゃないですか。
野木さん
担当MD
あのね。井村屋さんの「あずきバー」って、柔らかいタイプもあるとはいえ硬い事で有名ですよね。当然井村屋さんの元には「あずきバーが硬すぎる」というお客様からのご意見は来てると思いますよ。でも井村屋さんはずっと変えてないじゃないですか。なんでもかんでも「お客様が言ってるから」で「はいそうですかじゃあそうします」っていうのはまったく商品改善の本質ではないですよ。
岩崎さん
司会進行
……。
野木さん
担当MD
そもそも、このマジボイス実現委員会は変えなくて良いものまで、とにかくお客様の声を拾って「改善点をひねくり出す」みたいな所が目的化してませんか?
岩崎さん
司会進行
ちょっと待ってください。「変えるのが難しい」「変える必要がない」というのであればその結論は尊重します。おっしゃる通り売れている商品ですし、野木さんが「変える必要がない」というのであればその結論でも良いんです。

ただ「改善する」というのはたとえ売れている商品でも常に意識しなければいけない事だと思います。
ヨッピー
す、すいません。割り込むようであれなのですが、例えば他社商品と比べた時にどうなのかを調査して、「他社商品に比べても見落とりしない」というのであればこのまま販売しても確かに問題ないと思うんですが、その辺はどうなんでしょう?
野木さん
担当MD
同価格帯の他社商品に比べた場合には遜色が無い商品であるという認識です。
岩崎さん
司会進行
じゃあ、「商品を変える必要はない」と。
野木さん
担当MD
はい。その通りです。もしくは油の無いノンオイルのツナ缶もありますので、「油が多い」という意見についてはそのノンオイルの商品を案内する方法を考えるほうが良いのではないかと。
岩崎さん
司会進行
わかりました。
会議後の様子
岩崎さん
司会進行
怒っちゃいましたね(笑)
ヨッピー
まあでも野木さんの言い分ももっともですよね。だからこそ難しいんでしょうけど。
岩崎さん
司会進行
ツナ缶って、いま本当に大変なんですよ。売れる量がすごい分、原材料の確保も大変ですし、円安なので余計に厳しいんですよね。だから「ラベルレスにしてコストダウンしよう」とか色々摸索してるんですよ。
ヨッピー
まー僕もサラリーマン時代は商社にいたので、円安、円高になる度に大変なのはわかる……。
岩崎さん
司会進行
更に、物流コストを削るために海外からのコンテナを直接、弊社の物流センターに入れてるんですよね。
ヨッピー
あーーー。僕らは「直コン」って呼んでました。普通、コンテナが着港したらある程度小分けにしてトラックで運びますもんね。
岩崎さん
司会進行
そうそう。コンテナごと運んでコストを抑えるっていう。
ヨッピー
そんだけ大変な思いをして作ってるのに、「お客様からこういう意見来てますけど~」って簡単に言われたら腹立つんでしょうね(笑)
岩崎さん
司会進行
とはいえ、僕らも言わないわけにはいかないんでね……。
ヨッピー
モノを作るのは大変や……。とりあえず僕、他社商品と簡単に比べてみますね。
というわけで近くのお店をまわってツナ缶を買い集めてきました。
どれも同じ「ライトフレーク」と呼ばれるカツオの油漬けです。
他社の「ライトフレーク」と呼ばれるカツオの油漬け
他社の「ライトフレーク」と呼ばれるカツオの油漬け
フタを開けた感じはこう!
おおお、こうやって見ると確かに、ドン・キホーテのツナ缶は油が多く見える……!
ごろっとした塊が少ないせいかもしれない。
5分放置し、油をある程度切ってから再度重さを測ってみます
他社比較の様子
結果は以下の通り!

情熱価格 52g
大手メーカー 56g
大手小売店PB商品A 55g
大手小売店PB商品B 50g

なるほど、そこまで差がないな!
もちろん、簡単に測っただけなので「これが正解だ!」と言うつもりは無いのですが、それでも具材の量にはそれほど大きな差が出なさそうです。1缶あたりの価格差はけっこうあるのでドンキの10缶パックがだいぶお得かも。

ただし、「具材がゴロゴロ入ってる感」みたいなのにはけっこう差があって、大手小売店Bのツナ缶が具材のゴロゴロ感が一番強く、逆にドンキのツナ缶はゴロゴロ感が弱いかもしれない。製造工程の問題なのかな。
ヨッピー
……という結果になりました。野木さんのおっしゃる事が裏付けられた感じですね。ただし、具材の量自体が他とあまり変わらないとは言え、ゴロゴロ感があるかないかの見た目の印象でお客さんが「油が多い」って思っちゃうんじゃないかなぁ。
岩崎さん
司会進行
実は、この結果についても野木さんにぶつけてみたんですよ。
ヨッピー
また怒られそう……。
岩崎さん
司会進行
野木さんがおっしゃるには、「各社の製造工程における魚をほぐす機械は基本的に同じものを使っており、使用する魚の種類も同じです。それなのに『ゴロゴロ感』に違いが出て来るのは、カツオの年齢によって変わるからです。若いカツオはほぐれやすく、歳を取ったカツオはほぐれにくくなります。なのでその時に使った魚の年齢によって見た目の印象に違いが出ます。ただしゴロっとした塊で入っているものについては一般的にパサパサした身になりますので一概に『ゴロゴロしたものが良いもの』という事でもありません」ということです。
ヨッピー
ばっさり論破されとる。
本日のまとめ
  1. 01
    ツナ缶を安く、大量に作るのはとにかくたいへん
  2. 02
    「気軽に変えようって言うな」というMDの叫びが岩崎さんにクリティカルヒット
  3. 03
    「売れているものを変えたせいで売れなくなったらどうする」という部分はごもっとも
  4. 04
    「油が多い」というお客様にはノンオイルの商品を案内しよう
  5. 05
    野木さん、円安に負けずに頑張ってください
この記事のライター
ヨッピー
大阪府生まれ。「オモコロ」「トゥギャッチ」「ぐるなび」「Yahoo! Japan」「ライブドアニュース」など、さまざまなWEBメディアで活躍中のライター。「WEBでウケること」の第一人者として、タイアップ広告案件なども多数手がける。