実録!マジボイス実現委員会 ライターのヨッピーさんが改善会議に潜入!

商品開発現場のリアル「トイレットペーパーが硬い」という意見はどう改善!?

こんにちは。ヨッピーです。
みんな大好き驚安の殿堂ドン・キホーテ属するPPIHグループ(パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)の「マジボイス実現委員会」に何故かオブザーバーとして参加する事になりました。

「マジボイス実現委員会」とは「マジボイス」に寄せられたお客様からのご意見に対して、マジの本気で対応し、商品改善を行っていく組織だそうです。

これ、仕込みでもヤラセでもなんでもなく、マジのやつらしいんですよ。
「こういうの作って欲しい!」「ここを改善して欲しい!」という要望をマジボイスに投稿すると、いつか実現するかもしれない!

今日はこの、マジボイス実現委員会でどういった事が話し合われ、どういった流れで商品が変わっていくのかをお届けしたいと思います!

潜入した会議での対象商品

  • ド情熱
    超長省スペース5.5倍巻き トイレットロール ダブル 137.5m 4ロール置き場所省いて巻きは長持ち!買い回りも持ち帰りも保管も超効率的!
    商品コード:4902727014512
ヨッピー
この商品の
実現会議潜入してきました!
一般的なトイレットペーパー ダブル1巻あたり25メートルに対し、こちらの5.5倍巻は1巻あたり137.5mと圧倒的に長いので、

・22巻ぶんのトイレットペーパーが4巻で済むので置き場所を取らない
・1巻あたり5.5倍長持ちするので交換の頻度が少なくて済む
・当然買い物の頻度も減る

というスグレモノだそうです。
右が一般的なトイレットペーパー。左が今回の商品。
【開発秘話】:担当MD※遠山さん(社内の愛称:とっつぁん)

MD……マーチャンダイザー。商品の開発・企画・販売担当者。小売店における花形とも言える職種だが、問題のある商品や売れない商品を作ってしまうと「なんであんなものを作ったんだ」と全店舗から怒られまくるのでめちゃくちゃ責任が重い大変なお仕事。
今回の商品。
ガソリン代の高騰や人手不足により配送コストがとんでもなく高くなってきたので、長巻きにする事でコストダウンを狙った。そしてどうせなら「世の中でもっとも長いトイレットロールを作ろう」という事で生まれた商品。

省スペースになった事で「持ち運びが楽」「取り換え頻度が減る」「置き場所に困らない」という利便性もあるそうです。

ちなみに1メートルあたりの単価も一般的なトイレットペーパーより安いので、「これめっちゃ良いじゃん!今度からこれにしよ!」と僕自身も思ったのですが、この商品についても色々とお客様からのご意見が寄せられているそうです。

早速、会議の中身を見てみましょう。
マジボイス実現委員会の様子
けっこうな人数での会議!

出席しているのはマジボイス実現委員会の委員及び各商品の担当MDです。
岩崎さん
司会進行
こちらのトイレットペーパーですが、いいよ!/ビミョー率が2:1ということで、この改善をはかっていきたいと思います。
お客様からのネガティブコメントのうち代表的なものを検証していきます。
良い意見も悪い意見も全体に対して共有される。
お客様
トイレットペーパーを買うのが手間なのでこの商品は「すごくいい!」と思って数回買いましたが、なぜかトイレットペーパーが流れないことが多々……。結局同じ5.5倍を別のスーパーで買っています。
マジボイス実現委員会の様子
大嶋さん
品質改善課
こちらのお客様のお声を頂いた事で、我々のほうでも実験を行いました。
溶解実験の様子
溶解実験の結果
大嶋さん
品質改善課
JIS規格※に準じる形で4回の融解試験を行ったのですが、融解時間をまとめた表がこちらになります。およそ15秒前後で他社商品含めて融解する事がわかりましたが、特段この商品が「融けづらい」という特徴があるわけではありません。
※JIS規格……Japanese Industrial Standardsの略。日本の産業製品の規格や測定法が定められた国家規格のこと。これがあるおかげでメーカーが違っても互換性があったりする。

ただしダブル巻のトイレットペーパーよりシングル巻のトイレットペーパーの方が融解時間が短い傾向にありましたので、新たにシングル巻のラインナップを加え、トイレの水圧などお客様のおトイレの環境によってはそちらをお使い頂くことで解決する可能性がございます。
岩崎さん
司会進行
なるほど。あとはこういうご意見も頂戴しています。
お客様
4個中2個が芯の所が潰れていて回りませんでした。回らないトイレットペーパー5.5倍巻を2ロール使うのは相当なストレスでした。
遠山さん
担当MD
はい。トイレットペーパーはその形状からおわかりの通り、縦の荷重に対しては強いのですが、横の荷重に対して弱い、という側面があります。

実際に実験してみたところ、縦に積んだ場合は芯が潰れるといった事象は見られませんでしたが、横に陳列した際に芯の部分が潰れてしまうケースがございました。

従って、各店舗担当者に対して縦に陳列するように注意喚起を致しまして、縦陳列の徹底については完了しております。
「思ったよりだいぶガチのやつだな」と思いながら聞いているヨッピー
お客様
他のお店で6倍巻の商品が売られていた。5.5倍巻よりお得なのでそっちを買う。
遠山さん
担当MD
この6倍巻の商品については私も認識しております。トイレットペーパーのJIS規格は「直系12cmまで」と定められておりますが、該当のNB商品※はその直径を1cm上回っており、そのため古いペーパーホルダーをお使いのご家庭では使用出来ない可能性があります。
※NB商品……ナショナルブランド商品の略。大手メーカーが全国的に販売している商品のこと。逆にドン・キホーテの「情熱価格」などのシリーズはPB(プライベート・ブランド)商品などと言われる。

そういった事情もありますため、JIS規格に準じた直系12cm、5.5倍巻を上限として展開している次第です。

直径を大きくすれば6倍巻の商品も展開可能ですが、「家のペーパーホルダーでは使えない」というお客様のお声があがる事は避けられません。
岩崎さん
司会進行
なるほど。あとはお客様からのお声で多かったのが「紙が硬い」というものです。
こちらについては改善の余地があるのでしょうか。
遠山さん
担当MD
通常のトイレットペーパーと比較すると、ギュッと圧力をかけて巻いておりますのである程度「硬い」と感じるお客様が出てくることは想定されますが、こちらについては現状のダブル巻のラインナップにシングル巻を追加する事で改善出来るのではないかと考えています。

ダブル巻のほうが紙が分厚いため、「硬い」と感じる場面もあるかと思いますが、シングル巻のほうがより薄いため、柔らかい印象になるかと思います。
ダブル巻とシングル巻の手触りの違いを確認する参加者。
ヨッピー
僕も触らせて頂きましたが正直よくわかりませんでした。
岩崎さん
司会進行
私は今、現行品のダブル巻を使ってるんですが、今こう、シングル巻を触ってみたところ、自分の感覚だと、シングルの方がパリパリ感が強くてお客様に逆に硬い印象を持たれるんじゃないかと……。
遠山さん
担当MD
いやそんな事はないです。シングルの方が柔らかい感触になるのが通説なので。ここらへんは個人の印象ではなく複数人からヒアリングするようにして欲しいですね。
ピリピリする会議室。
岩崎さん
司会進行
ヨッピーさんはどう思いますか?
ヨッピー
(急に振られた……!)ええと、ちょっとお話を聞いてて、「ダブルとシングルどっちが硬いか」の前にそのお客様の「紙が硬い」という意見についてもう少し深堀りした方が良いんじゃないかと思いました。

と言いますのも、「紙が硬い」という言葉も「肌にあたった感触が硬い感じる」とか、「くしゃくしゃに丸める時に硬く感じる」とか、「表面がツルツルしてて硬く感じる」とか逆に「ざらざらしてて硬く感じる」とか、お客様の個人的な好みによって何を指して「硬い」と言ってるのかにはバラツキがあると思うんですね。

なのでお客様から意見を頂いた時に、もう少し細かく突っ込んでご意見を聞いてみた方が良いんじゃないかと……。
岩崎さん
司会進行
なるほど。それはおっしゃる通りですね。今後ご意見を頂いた時にもう少し深堀りしてお話を聞く事も念頭に入れたいと思います。
ヨッピー
(なんか知らんけど良かった)
遠山さん
担当MD
ともあれ、関西圏ではダブルよりシングルの方が売れる、というデータもありますし、シングルを使う事によって紙の節約になる、つまり資源を消費せず地球に優しいという事も言えると思いますので、ダブル巻とシングル巻両方を展開する事で、お客様のお好みに合わせた選択肢を増やしていきたいと思います。

先ほどの実験結果からもシングル巻のほうが融解速度が早いこともありますので、シングル巻を展開することで「硬いと感じる」「つまりやすい」といったご意見については改善出来るかと。

ただ、シングル巻をラインナップに加えることによって「より柔らかくなりました」「より流れやすくなりました」といったポイントを訴求するとしても、「それならダブル巻は硬いのか」「ダブル巻は流れにくいのか」とネガティブに捉えられてしまう可能性もありますし、現状の「省スペース」「手間が省ける」といった訴求ポイントとのバランスをどうするかという部分も考えながらパッケージデザインを落とし込む必要があります。
岩崎さん
司会進行
ヨッピーさんはどう思いますか?
ヨッピー
ええと、「なんでド素人の僕に聞くんだ」とは思いつつ、もしパッケージを新しくするのであれば、「地球に優しい」という事はもう少しアピールしても良いんじゃないかと思いました。

と言いますのも、省スペースという事は輸送効率が高いという事ですし、それに伴って輸送する際のガソリン消費量が減りますよね。つまり「地球に優しい」っていう。

トイレットペーパーってそもそも、かさばる割に単価がそこまで高い商品ではないですから、輸送効率が良い商品ではないですし、僕は皆さんのお話を聞いてて「今度から家のトイレットペーパーはこれにしよ」って思ったのでその辺が上手く伝わると選んでくれるお客さんも増えるんじゃないかと……。
岩崎さん
司会進行
なるほど。ありがとうございます。
他の参加者
ダブル巻のデザインを変えずに、シングル巻を「より柔らかくしました」と訴求するのであればダブル巻への影響はそれほど大きくないのではないか。
他の参加者
そもそも5.5倍巻なので、「普通の巻き方よりちょっと紙が硬くなってしまう」という事はお客様も折り込み済みでご納得頂ける範囲だと思う。
他の参加者
「紙の硬さ」より、芯が潰れてしまう方がどう考えても致命的なので担当者に周知するだけではなく、外装パッケージに陳列する際の注意書きを加えるなどの対応策が必要ではなどなど。

マジボイス実現委員会を終えた感想

遠山さん
担当MD
そもそも、5.5倍巻にするとサイズが大きくなってしまい、JIS規格に合わなくなったり、紙質が硬くなってしまうなどの問題が出てくるのでそこの解決にめちゃくちゃ苦労した商品なんです。

なのでシングル巻を作る事も視野に入れて製造元の会社様に以前よりお願いしていたのですが、ずっと断られていたんですね。でもマジボイスからのご意見もあって、「やはりお客様から求められています」「社会貢献にもなります」という事を粘り強く交渉した事でやっと実現出来そうです。やはりお客様からの直接の感想を頂けるのは大きいです!
ヨッピー
「普通に良い商品じゃん」と思いました。たしかに普通のトイレットペーパーってかさばるし、交換も面倒臭いし、今度から僕の家もこれに変えようと思います。

ちなみに、こうやって出た改善案については、商品にもよりますがおおむね3ヵ月~6ヵ月の開発期間を経て改善されていくそうです。
その様子についてはこちらマジボイス実現委員会でも報告しておりますのでご興味のある方はぜひ覗いていってください!
本日のまとめ
  1. 01
    「トイレットペーパーの紙の硬さ」ひとつとっても改善するのは大変!
  2. 02
    5.5倍巻のダブル巻は維持しつつ、シングル巻も追加する。
  3. 03
    6倍巻にはしない。なぜならJIS規格に収まらない= ホルダーにはまらなくなるから。
この記事のライター
ヨッピー
大阪府生まれ。「オモコロ」「トゥギャッチ」「ぐるなび」「Yahoo! Japan」「ライブドアニュース」など、さまざまなWEBメディアで活躍中のライター。「WEBでウケること」の第一人者として、タイアップ広告案件なども多数手がける。